Bill Evans & Jim Hall / Intermodulation
無人島に一枚持っていくならどれか? というのは使い古された問いですが 僕は迷わずBill Evans & Jim Hall の Intermodulation。
ずいぶん前に買ったので新しい盤は出てないかと調べたら、僕が持っているのは1990年発売のもので、2011年にSHM-CDで出ていました。iTunesもどうやら1996年のクレジットなので古い様子。1990年盤と同じ音に聴こえます。 SACD盤もあるみたいですが、再生機器を持っていないので(リッピングできないってどうしたらこんな仕様になるのか不明)ハイレゾ版をダウンロード販売してないかと探してみましたが、どこにも売ってないようです。
https://itunes.apple.com/jp/album/ive-got-you-under-my-skin/id80153055?i=80153058&uo=4&at=1000lhe
Amazonは分かりづらいですが
が
インターモデュレーション [SHM-CD][CD] - ビル・エヴァンス&ジム・ホール - UNIVERSAL MUSIC JAPAN
これ。
1990年発売盤と2011年盤だと21年経ってますから、きっと音はよくなっているだろうという期待で購入。まだ届いていませんが。
追記:届きましたが、音が全然違います。耳の善し悪しなんていうレベルではなく、まったく違います。 まず、1990年盤は2011年盤に比べると、ドンシャリ化してあるような音です。逆に言うと2011年盤は中域が豊か。2011年盤はだいぶ音圧が上がっているため、若干ノイズが目立つ部分があるのですが、ひょっとしたらこれを削ったから1990年盤は中域が欠けているのかもしれません。 2011年盤はハイレゾっぽい感じとでも言いましょうか、ぶりっとして音が前に出てくる感じです。そしてとてもクリア。
違いは音質だけではなくて、なんとMy Man's Gone Nowは2011年盤には1990年盤にない、最初の一拍目のピアノの和音が入っています。何かイントロのリズムがおかしい気がしていたのですが、一拍かけていたからでした。1990年盤はCDでトラックごとに分けるときにミスしたのかもしれません。
愛聴されている方は買い替えをオススメします。
CDは、LED ZEPPELINなんかが分かりやすいのですが、初期(80年 ~ 90年初頭)に出たものは概ね音質が酷い。MDみたいな音が多い。デジタルののっぺりした音とでも言いましょうか。 しかし、CD用マスタリング技術がこなれてきたのか、1990後半 ~ 2000年ぐらいの(再)発売でだいぶよくなって、その後は微妙な変化になり、この辺になると今回のマスタリングは好みじゃないとかなんとか言うレビューが増えてくる、という感じ。
さて、内容です。 このアルバム、全6曲 32分ぐらいしかないのですが、最高の時間を作ってくれます。
レコーディングはApril 7, 1966、May 10, 1966の二回ということなので、なんと明後日で49周年、来年50周年。
Intermodulation 1966
- I've Got You Under My Skin
- My Man's Gone Now
- Turn Out The Stars
- Angel Face
- Jazz Samba
- All Across The City
Intermodulation (album) - Wikipedia
I've Got You Under My SkinはCole Poter作曲。このアルバムの中ではこの曲とJazz Samba以外はバラード。いきなりJim Hallの最高にメロディックなソロから始まり、Evansのソロからじょじょにテーマが聴こえてきて終わるというなんとも素敵な展開で心奪われます。フランク・シナトラが拳を握って、いや、指を鳴らしながら歌っているイメージですが、この収録アレンジ、テンポになるとバロック期みたいな雰囲気。
My Man's Gone Nowはガーシュインの曲。Bill EvansもJim Hallともにその後何度か演奏しているのでお気に入りなのかもしれません。ガーシュインとコール・ポーターはスタンダード曲の作曲者で一番二番ぐらいに出てくる人じゃないでしょうか。
Turn Out The StarsはBill Evansのオリジナル。曲名を冠したアルバムが出ているぐらいなので代表曲と言ってもいいのではないかと思います。
3曲続けてスローテンポな曲でAngel Face。ウェザー・リポートのJoe Zawinulの曲。とても美しいアレンジ。 この曲のオリジナルは何で聴けるかというと、Joe Zawinulはこの時期Cannonball Adderleyのバンドに在籍中で、AdderleyのDominationというアルバムにMystified (aka Angel Face)として収録されています。Dominationは1965年リリースなのでそのすぐ後にカバーされた、ということになります。
Adderleyはビックバンド期のようで、まったく同じ曲に聴こえません。
Bill EvansはJoe ZawinulのMidnight Moodという曲もやっていたりするので、これはEvansの選曲かもしれません。In a Silent WayもZawinulだし、素晴らしいソングライターですね。
Jazz SambaはClaus Ogermanの作曲。この人、知りませんでしたが、アントニオ・カルロス・ジョビンの曲のアレンジをやっていた人だそうです。
サンバといえば、Jim Hallは本作の3年前、1963年にポール・デスモンドとTake TenでSamba De Orpheuをやっています。両曲ともにとてもグルーブしているバッキング。
最後はJim HallオリジナルのAll Across The City。この曲はJim先生がその後もずーっと演奏し続けている曲。
今回調べてみて、当時としてはそれぞれのオリジナル、スタンダード、最新の曲、というよいバランスのアルバムだったということが分かりました。 Undercurrentに比べて、知名度がかなり低い本作ですが、My Funny Valentineみたいな看板曲が収録されていて、ジャケットがもっとキャッチーだったらこちらが超名盤扱いだったかもしれません。Undercurrentはあの演奏の漂うかのような雰囲気を「底流」と名付けたこと、そしてそれをあのジャケットで表現した天才的な人が居た、というのが大きい。 あとUndercurrentはBlue NoteレーベルからのリリースでIntermodulationはVerveという違いもあると思いますが、 やっぱりピアノとギターのデュオの到達点を最初に見せたのがUndercurrent、というのが一番の理由かもしれません。
Verveといえば、The Complete Bill Evans On Verve
という「VERVE期の全音源を収録した18枚組コンプリート・ボックス・セット」が出ていますが、これにも本作のアウトテイクは入っていないのでどうやら存在しないみたいです。残念。
The Complete Bill Evans On VerveはAmazonで6,980円なので今が買いかもしれません。 CD一枚 400円を割っている計算。
Undercurrentと比較しての特徴は、なんといってもミックス。 LチャンネルよりがJim Hall、RチャンネルがBill Evansと割りと大きくパンニングされていてとっても耳コピしやすい。
ともかく超オススメ盤です。
本作を次に記事にするときには、奏法、アレンジ解説みたいなのができるよう、耳コピ、アナリーゼなどに励みます。